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 製品組立を考えよう
 製品の組立について、基本的な工法を述べてみたいと思います。ご存知のように、製品はその機能や性能を発揮させるために、多くの必要な部品から構成されています。この部品をどのように組立ていくか、一般的な製品の基本的な組立工法について、長年の経験を踏まえて説明したいと思います。
 製品の組立工法は、その製品独自の技術ですが、その基本となる技術について述べてあります。初心者の生産技術者の皆様のご参考になればと思います。また、製品をどのように組立するかについては、「製品組立技術」のところを参照してください。
 

 目次

1.製品組立
1.1 製品の組立とは
1.2 組立に用いるいろいろな工法
2.ネジによる組立
2.1 おネジとめネジ
2.2 ネジの締め付け
2.3 正しい締め付け作業
3.ボルトナットによる組立
3.1 ボルトとナット
3.2 平ワッシャーとスプリングワッシャー
3.3 ボルトやナットのゆるみ
3.4 ゆるみ止めのいろいろな方法
3.5 締め付け工具
3.6 トルクレンチ
4.溶接による組立
4.1 溶接の課題とは
4.2 スポット溶接
4.3 プロジェクショシ溶接
4.4 アーク溶接
4.5 ガス溶接
4.6 シーム溶接
4.7 フラッシュバット溶接
4.8 摩擦溶接(圧接溶接)
4.9 レーザー溶接
4.10 その他の溶接法
5.接着
5.1 接着の利点
5.2 接着工法の採用
5.3 部品の精度確保
5.4 接着時間
6.その他の工法
6.1 ロー付け
6.2 圧入
6.3 はぜ折りとかしめ
6.4 焼ばめ
6.5 キー留め
6.6 スナップリング留め
6.7 クリップ留め
6.8 その他縫製な



1.製品組立
 これからは組立自動化が必須です
1.1 製品の組立とは
 
 製品組立とはどういうことかを改めて考えてみると

(A)製品を作る
 製品を構成するいろいろな部品を順序良く組み合わせることによって「製品をつくる」ことです。組立にはさまざまな方法を用います。

(B)付加価値をつける
 材料を加工して部品をつくり、その部品を組立てて、製品を作ることによって新たに「付加価値をつける」ことです。

(C)新しい製品やサービスを生み出す
 組立は一個の製品をつくることだけではなく、製品(モノ)と製品(モノ)をインターネットなどでつなげることにより新たな製品をつくる一つの技法といえます。すなわち、製品を組み合わせることによって「新しい製品やサービスを生み出す」ことでもあるといえます。

1.2 組立に用いるいろいろな工法
 
 組立は、基本的には部品と部品を組み合わせることです。一般的には作業順序として、製品を構成する二つの部品をしっかり一体化することが必要です。そうでなければ、部品同士はすぐバラバラになってしまいます。組立工法として使われるいろいろな工法について検討していきます。なお、部品と部品を組み合わされた一つの組立品をサブ組立品(Sub-Assembly Parts)と呼ぶことがあります。これは組立工程途中の仕掛品でもあります。

<基本的な組立工法>
 次のような工法があげられます。
 ネジは種類も多く、組立に必ず使われる部品です 
いろいろなネジ類(ネジメーカーのパンフレットより)  

①ネジ締め
②ボルトナットによる組み付け
③溶接
④接着
⑤ロー付け、半田付け
⑥圧入
⑦カシメ、はぜ折り
⑧キー留め、スナップリング留め
⑨クリップ、グロメット、リベット止め
⑩その他、縫製など


2.ネジによる組立 いろいろなネジの特徴を知ろう ネジ(ねじとも書きますがここではネジとしています。)類を用いた組付けは、製品組立には欠かせないものです。多種多様なネジが市販されており、いろいろな製品に使われています。ネジ類やボルトナットに関しては、その種類毎に多くのJIS規格がありますので、詳しい内容についてはJIS規格を参照してください。ここでは、組立作業に関する実務的な内容を中心に述べてあります。

 ネジの始まり
 ネジはいつごろから実用的な使われ始めたか調べてみると紀元前の時代からネジは存在していたようです。ネジが日本に入ってきたのは、1500年代に、ポルトガル人が種子島に漂着した時に持っていた「火縄銃」にネジが使われていたのが始まりといわれています。この銃のいわば国産化を行う過程でネジの作り方を研究して、ネジが実用化されていったのではないかといわています。

2.1 おネジとめネジ
 ネジの種類は非常に多いので、製品設計者はその選択に気を配らなければならないといえます。ネジは「取り付けてそのままにする」ネジの場合や「開閉、交換又は補修時など取り外す」ネジといったように使用用途別の区分もあります。前者は緩んではならないが、後者は緩まなければならないという課題があります。
 さらに、効率的に組み付け作業ができるようにネジの頭もいろいろな形状が工夫されています。図に示すものは、小物部品の組み付けに使用される代表的なネジで、雄ネジ(おネジ)でもあります。相手部品は雌ネジ(めネジ)となりますが、通常のナット以外に組み付け部品によりいろいろな雌ネジが考えられ ています。 
 ナット類は六角ナットのほか、溶接ナットもよく使われています。これはプレスパネルに直接溶接したものです。ナットの挿入が困難な場合にプレスパネル側に溶接しておくものです。その他ナット類(めネジ)にはいろいろな種類があります。
 ネジの頭と長さがポイントです
 いろいろなナットの形状を知ろう
 プレス加工の穴もナットの代行をします
 例えば、右図に示すように部品(プレス部品)の組み付け穴にフランジをつくり、その穴にネジを作る(タッピングという)ことによりネジを組み付けられるようにします。簡単な組み付けでは、プレスパネルに突っ切り穴(バーリングという)を設けることにより、ネジを組み付ける方法です。この穴にはめネジは切りません。

2.2 ネジの締め付け
 小物品の組み付けに使用されるネジ類は、ドライバーによって組み付けるものが多いのですが、ナット類ではボックスレンチを用いるものが多いといえます。
 量産品の組み付けでは、エヤー工具(インパクトレンチやナットランナーなど)が使用されます。かって現役時代にはまだ便利なトルク調整のないタイプの工具だったので、ときどき締め過ぎてネジの頭をねじ切ってしまいました(頭を飛ばすと呼んでいました)。リーダーから随分冷やかされました。ネジの本体部分がネジ穴の中に残ってしまうので、その後処理に随分手間がかかりました。エヤーツールを使った締め付けでもある程度の技能が要求されます。なお、規定のトルク(締め付け力)を要するものは、トルクの判明するレンチ(トルクレンチ)などで締め付けなければなりません。

2.3 正しい締め付け作業
 ドライバーを正しく使う  ネジ締めを行うには空間が必要だ
 これは常識的なことですが一応記載しておきます。問題になるのは作業に必要な空間を十分確保されていなく、正しい作業ができない場合が
少なくありません。さらに作業姿勢が苦しい場合や、ラインのスピードに追われて適正な作業が行われないなどの問題も生じますから、正しい作業ができるように改善を図らなければなりません。さらに、工具の選定も重要なことです。当然ですが、必要な締め付け力(トルク)を得られるものを選択します。

 ネジの問題(その1矛盾):
 
組立に使うネジは、締め付けることにより部品をしっかり取り付けるものです。しかし、その部品を補修などで交換(取り外す)する場合には、ネジはゆるめなければなりません。ネジはゆるんではいけないが、しかし、ゆるめることができなくてはならない。ここにネジの矛盾があります。ネジがゆるむと、ボルト本体に設計以上の加重がかかり、最後には切断するという大きな問題にも発展します。「ネジはゆるむ」ことを常に考えておくことが必要です。
 ネジの問題(その2ゆるみ)
 ネジは取り付けた後「ゆるむ」という問題が常にありることは述べました。ネジがゆるんだことによるいろいろなトラブルや事故が起きています。設計者や作業者は、この点を常に意識していなければなりません。ネジのゆるみ止めの技術的な対策やゆるみ止め商品は数多くあります。ネジの使用部位や条件などによって適正なゆるみ止めをおこなわなければなりません。

3.ボルトナットによる組立
3.1 ボルトとナット
 ボルトとナットの組み合わせ
 溶接ナットの用い方  熔接ボルトの用い方
 ネジのサイズが大きくなると一般的に六角ボルトを使用することになります。ボルトナットの材質は、必要な締め付け力を得られる強度のあるボルトを選択する必要があります。ナットは、取付位置や組み付け部品の形状から直接挿入できない場合、溶接ナットも使用されています。溶接ナットは事前に組み込まれることになります。また、組み付け作業状態によっては、逆にボルトを溶接する方法も採用されています。

3.2 平ワッシャーとスプリングワッシャー
 代表的なワッシャー
 フランジ付ナット
 ボルトナット組み付けでは、締め付け力の安定的な確保やゆるみ止めのため、平ワッシャーやスプリングワシャーは必要な組み合わせです。その他、ナットとワッシャーが一体となったフランジ付ナットなどいろいろな回り止め(ゆるみ止め)ナットが考案され販売されています。下図の部品の締め付けボルトでは、ボルトの径と穴との差がある場合はボルトの接触面の不足などが生じますから平ワッシャーの使用が必要になります。(例:下図部品Aの場合や部品Cの場合)

 ワッシャーの使い方  ワッシャーの使い方

3.3 ボルトやナットのゆるみ
 ボルトナットのゆるみ止めの例
 ボルトやナットを使った締め付けで問題となるのは「ネジのゆるみ」です。ナットのゆるみは、ナットが逆回転してしまうことですが、その他にナットは逆回転しなくとも軸方向の力が低下することによるゆるみもあります。ボルトナットの締め付ける力は軸力になりますが、実際の作業においてはこれを測定することは難しいので、代用特性として、回転する力である「トルク(Torque)」を測定しています。トルクに影響するのは、ボルトナットの材料、材質やその材料面の摩擦力などに影響されます。特に、振動や熱の影響からこの摩擦力が変化してくるとボルトナットのゆるみが起こります。このようなゆるみを防ぐためにいろいろな工夫がされています。

 <ゆるみ発生の原因>
 次のようなことがあげられています。
①作業者が定められた締め付け作業を行わなかった(トルク不足)
②平ワッシャーやスプリングワシャーの使用ミス(欠品)
③締め過ぎによるボルトやナット座面の変形(部品の凹みなどやゆがみの発生)
④ボルトナットに繰り返して振動が伝わり、ネジ部分の滑りによるゆるみが生じる
⑤組み付け部分に強い外力を受けた時、ボルトの強度不足によるボルトの変形
⑥締め付け部品のなじみによる軸力の低下(部品同士隙間などの合わせが悪い場合)
⑦締結部分の高熱による熱膨張などからくるボルトの変形や強度の低下
(例:ブレーキやホールタイヤ組立部位)
⑧その他繰り返して応力が加わることによる疲労による場合など
 設計者は、締結部分の負荷や作業条件などを十分検討し適切なゆるみ止め対策を取らなければならないといえます。また、現場の監督者は、正しい締め付け作業方法を指導することが必要です。

3.4 ゆるみ止めのいろいろな方法
 ボルトナットなどネジのゆるみとは、ボルトやナットが締め付けと逆の回転を起こすことですから、このゆるみを如何にして防止するか、ネジメーカーの技術者や製品設計者たちは、苦心しています。

(1).締付け作業対策
 ネジ類の組付けに当たっては、正しい締め付け作業を行うことが重要なことはいうまでもありません。特に、未熟練作業者に起こりがちなことは、最初のネジの2~3山が正しく挿入されていないのに無理やり工具で締め付けること、規定の締め付け力(トルク)で締め付けていない、または締め過ぎてしまうことです。監督者は正しい締め付け作業指導を行わなければなりません。さらに、使いやすい工具の準備も大切なことです。さらに、無理な作業姿勢による作業も改善しなければなりません。狭い作業空間や短時間で作業しなければならないライン作業は、作業者泣かせです。これは私の現役時代の苦い経験です。

(2).組付け部品の対策
 ボルトナットのゆるみの原因  ボルトナットのゆるみの原因
 締め付ける部品の精度が悪いとゆるみの原因になります。部品間に隙間や締め付け力に反発する抵抗が生じると見かけ上トルクが出たように見えますが、締め付け後少しずつ部品同士がなじんでくると締め付け力が減少してきますからゆるみの原因となります。組み付け部品の品質向上は技術者の大きな仕事です。

(3).設計による対策
 
ネジ類のゆるみ止め対策は、設計段階でしっかり対策しておく必要があります。組付け強度だけではなく、ゆるみ止めを考慮したネジ類の選択と組合せを行わなくてはなりません。

 ボルトナットのゆるみ止めボルトナットの ボルトナットのゆるみ止め 
①スプリングワッシャーとダブルナット
 これはよく使われるゆるみ止めはスプリングワッシャーです。同じような役割のダブルナットも使われますが、一般の製品では先ず採用されていなく、大型建築鉄骨の繫ぎなどに見られるようです。

②ゆるみ止めナット
 いろいろなゆるみ止めナットが工夫されて販売されています。個別の具体的な仕様などについてはネジメーカーやネジ販売店などに照会していただきたいと思います。また、ゆるみ止めナットやボルトに関しては、JIS規定もありますから参照してください。

 <市販されているいろいろなゆるみ止めナット>
ナットの名称
 (商品名)
 ゆるみ止めの概要や特徴
 1  Uナット  ナットの中の上部にばね材を組み込みばねがネジに食い込みネジの回転を阻止する
 2  ナイロンナット  ナットの上部にナイロン樹脂を組み込み締め付け時にこのナイロンが変形することにより回転を阻止する
 3  ハードロックナット 凸凹形状の二つのナットを組み合わせて取り付けるもので、凸ナットは偏心加工されているため締め付け時にくさび効果でゆるみを阻止する 
 4  新ロックナット  凹形状のナットと凸形状偏心ワッシャーを組み込むもので、締め付け時にワッシャーがネジ面に食い込むことでゆるみを阻止する
 5 マッスルナット  ナットの中にスプリングコイルを組み込んだもので、締め付けた時このスプリングによりナット回転を阻止する
 その他、Vナットなどの商品があります。

③ナットの脱落防止

 組み込んだナットがボルトから脱落することを防止する対策
 ナット脱落防止名称 主たる特徴  
 1  割りピン組み込み  ボルトおよびナットに割りピン取り付け穴をあけ、割りピンを挿入することでナット脱落を防ぐ(JISB1170)  割ピンの例
(JISB1351)
 2  ペタルファスナー
(商品名)
 ナット締め付け後、専用のファスナーを組み込みナットの脱落を防止する  ナットのゆるみ止め
 3  イダリング
(商品名)
 ナット締め付け後専用のリング金具を組み込むもの  ナットのゆるみ止め
 ほかにもいろいろな商品が販売されています。

④特殊なワッシャーによる対策
 ワッシャーの名称   主たる特徴
 1  皿ワッシャー JISに規定されているワシャー  ゆるみ止めワッシャーの例 
 2  ノルトワッシャー
(商品名)
 2枚のワッシャーにギザギザをつけ、その一つは偏心させたワッシャーでセットで組み込みゆるみ阻止する
 3  ローゼットワッシャー(商品名)  山形形状に成形されたワッシャーで小ネジに使われる
 その他、いろいろな特殊なワッシャーが販売されています。

⑤ゆるみ止めボルト
 ゆるみ止め対策の例
 一般に使われているのは、ネジ部にゆるみ止め剤(樹脂材料など)を塗布したものがあります。さらに、気密や水密を要する部位にはシールテープを巻き付けることはよく知られています。また、ネジ山に角度(傾斜)をつけておき、ナットと締め付けた時に正規の状態にしてゆるみを防止するボルト(商品名トラスコボルト)もあります。このようなゆるみ止めボルト商品が市販されているので事前に研究しておく必要があります。

⑥接着剤によるゆるみ止め
 小ねじなど一度組み込めば取り外しのない場合は、ネジ部に接着剤を塗布して固定する方法があります。ネジ類を接着すると補修時(取り換えなど)には問題が生じるので、事前によく検討する必要があります。

ゆるみ止め商品:
 ゆるみ止めボルトやナットなどに関しては、多種多様な商品が市販されています。ボルトをはじめとするネジ類を採用する場合には、必ず「ゆるみ」の検討を行う必要があります。どのような設計的な処置を行うか検討しなければなりません。その場合、多くの市販の商品から選択したり、設計的な対応策を図面に反映します。 


3.5 締め付け工具
 いろいろな締付工具
 ネジ類の締め付けには、いろいろな工具が使われています。その作業に最適な工具を選択することになります。一般的にはエヤーツールが使われています。その他電動式などあり、いろいろな工具名称で市販されていますので、作業の効率を考えて最適な工具を使うように選定します。
 一般によく使われているのは、右図に示すような工具です。ボルトやナットの大きさに応じて先端のボックスやドライバーも合わせることになります。このような工具類もさまざまな種類が市販されていますから適正なものを選択しなければなりません。

3.6 トルクレンチ
 代表的なトルクレンチ
 トルクレンチは、締め付け作業の中で適正な締め付けを行ったり、締め付け力(トルク)を検査したりするためにも必要な工具です。トルクレンチには規定されたトルク値を設定して締め付けることができるものと締め付け作業のトルクを測定するものとがあります。締め付けトルクを設定されたボルトナットの締め付け作業は、必ずトルクを測定しなければなりません。いろいろなトルクレンチが市販されていますからその作業に」最適な工具を選んでください。
 トルクレンチの使用にあたって重要なことは、定められている握り部分を確実に掴むことです。自分勝手な掴み方は厳禁されています。


4.溶接による組立
 いろいろな熔接による組立があります
 製品の組立に使用される溶接工法は、たくさんありますのでその製品組立に適した工法を採用する必要があります。また、コスト面での検討も欠かせません。設計者は溶接工法を十分検討して設計図面を作成することです。生産技術者との連係も大切なことです。

4.1 溶接の課題とは
 溶接は、文字通り材料に熱を加えて溶融させて接合するものです。この高熱によって材料は膨張し、冷えると収縮することはいうまでもありません。したがって、溶接後は組立品の形状が変化します。この溶接による変形を防止することが技術者の腕の見せところです。特に溶接時に使用する組立治具仕様が大切な要素になります。この組立治具については、別項で説明します。
 溶接作業は溶接する部位が決まっており、作業条件の変動も少ないので、ロボットによる自動溶接が一般化しています。今後、溶接作業はほとんど自動化される時代となります。
 なお、後述しますが、昨今接着技術が急速に進み製品の組立に採用されています。将来は、溶接から接着へ変換が進むと予想しています。
 また、溶接作業時には、高熱の溶融金属が作業者に直接飛散することがありますので、保護具の着用は必須となっています。

4.2 スポット溶接
 スポット溶接設備の概要です
スポット溶接のポイント 
 スポット溶接の例
 スポット溶接は製品組立の中でよく使われる溶接の一つです。自動車のような鋼板の組立には必須の溶接組立です。右図に示すのはスポット溶接設備の概要です。溶接は溶接ガンを使って鉄板の抵抗発熱を利用して点(スポット:Spot)で溶着するものです。作業者はこの溶接ガンを操作して作業します。最近ではロボットを使った溶接が主流となっています。(自動車組立の項を参照してください。)
 スポット溶接の溶着部位を右図に示します。電極(チップ:Tip)でパネルを加圧し、短時間に大電流を通電することにパネル合わせ部が抵抗発熱により高熱を発生させ溶着部(ナゲット:Nugget)をつくるものです。このため、「抵抗溶接」とも呼ばれています。
 このスポット溶接の問題点は、完全に溶着しているか(溶接ができているか)を直接確認することが困難であることです。表面の目視でナゲット痕があっても溶接不良の場合があるため、適宜溶着確認作業(剥離テストなど)を必要とすることです。


4.3 プロジェクション溶接
 プロジェクンション溶接機

ナットの溶接設備と溶接方法
 この溶接は溶接する部品の一部に突起(プロジェクション:Projection)を設け、そこに電流を通すことにより溶接するものです。主に溶接ナットを鋼板に直接溶接する場合に利用されています。組立作業時にナットの挿入が困難な場合にナットを前もって溶接しておくものです。溶接は専用の溶接機を使用します。
 なお、溶接に使われるナットは「溶接ナット」で一般のナットと区別されます。また、量産品でない場合や特別な場合は、ナットを直接アーク溶接することもあります、
 さらに、ボルトの挿入が困難な取り付けの場合、ボルトを先に溶接する方法も行われています。この場合のボルトはスタッドボルト(Stud Bolt:植え込みボルト)と呼ばれています。専用の溶接機を使います。

4.4 アーク溶接
(1)アーク溶接とは
 アーク溶接設備
 MIG溶接設備
 アーク溶接方法の例です
 アーク溶接は、文字通り電極(ホルダーで掴む溶接棒)と母材(組立品)との間にアークを発生させ、その高温のアーク熱により溶接するものです。量産品の溶接には、溶接棒(通常はワイヤー)をトーチに自動供給して連続長時間溶接ができるものです。溶接棒をプラス電極にしたミグ溶接(MIG:Metal Inert Gas Welding)、電極にタングステンを用いるティグ溶接(TIG:Tungsten Inert Gas Welding)の溶接法が一般的に使われています。溶接部のシールドガスとして用いる不活性ガスには、炭酸ガス(CO2)やアルゴンガスが使われています。

(2)アーク溶接による熱変形
 アーク溶接は、溶接部分には高熱が発生するのでその熱によって組立品の膨張と収縮が起ります。多数の部品をアーク溶接で組み付ける製品は、その組立精度の確保が困難な問題が起こります。組立治具の仕様や溶接工程の設計などに技術力や経験が必要です。

(3)アーク溶接の安全対策
 アーク溶接時には、強い光を発光するため、作業者の目の保護のため、その光を遮蔽するメガネ(保護面、お面)を使用しなければなりません。現在では、被覆材を用いた溶接は、少なくなりましたが、この溶接棒に付着されている被覆材は、溶接後塗装前に剥離しなければなりません。溶接完了後、被覆材はスラグとなって溶接ビード部位を保護しているため、ハンマー等で除去します。この場合、粉じんとなって飛散しますから、保護マスクを着用しなければなりません。

4.5 ガス溶接
 ガス溶接設備
 ガス溶接は昔からよく使われている溶接法で、いろいろな材料の切断作業や組付け時の溶接に用いられています。酸素ボンベとアセチレンガスボンベを持ち運んでどこでも作業できるという便利さがあります。加工前の材料の裁断や製品組立では特別な個所の溶接や穴埋めなどのほか、ロー付けなどにも使われています。この溶接は、母材(溶接部)に高い熱が加わるので注意が必要です。特に、切断作業では溶融された鉄板の破片や溶融金属などが作業場の周辺にも飛び散るので、作業の安全のほか職場の周辺の火災などの原因にもなっているので注意が必要です。

4.6 シーム溶接
シーム溶接方式を示します 
 シーム溶接(Seam Welding)は、気密や水密を要する容器類の溶接組立に用いられています。例えば、燃料タンク、オイルタンクなどです。この溶接は二つの円形電極を回転させながら溶着部位が連続するように溶接するものです。なお、この溶接は電極が高熱になるため、強制的な水冷や電極の自動整形が必要になります。また、完成検査で溶接部の気密試験が行われます。
 

 フラッシュバット溶接の説明図です
4.7 フラッシュバット溶接
 フラッシュバット溶接(Flash-bat Welding)は、二つの材料を数ミリの間隔をあけてセットし、電圧をかけて近づけると材料が高熱となりフラッシュが発生します。 双方の材料が溶接に必要な高い温度になった時、加圧することにより接合するものです。
 その昔、現役時代自動車ホイールのリムの製造工程でこの溶接を行った経験があります。長方形に切断された鋼材をローラーで丸めておき、フラッシュバット溶接で円状につなぎ合わせます。溶接部の肉盛り部分を切削整形後ローラー成型機でリム形状に加工します。当時は少量生産のため手動操作でした。ハンドルレバーを操作しながら上下の成型ロールの加圧を加減しながらリム形状を作っていくものです。通路からの見学者の前で新前の私は、かっこよく仕事をしておりました。


4.8 摩擦溶接(圧接溶接)
 摩擦溶接の説明図です
 摩擦熱を利用して溶接するのが圧接溶接です。溶接する材料を接触させて、一方の材料を高速回転していくと摩擦で高熱が発生します。この時に回転を止めて高圧力を加えて溶着する方法です。一般に丸形状の材料がよく使われており、異種金属の溶接にも使われています。この溶接法では材料の全面が溶着しているので溶接部は強い強度を確保できます。



 レーザー溶接設備
4.9 レーザー溶接
 レーザー溶接(LASER Welding)は、レーザー発生装置からレーザー光をヘッド(レーザー光をレンズで焦点合わせする)に送り、 溶接や切断を行うものです。レーザー光のエネルギーをレンズで一点に集中出来るので、熱をかける面積が小さくてすみ、したがって、溶接速度も速くできるという利点があります。光エネルギーが集中できるので、微細加工や材料の精密な切断にも利用されています。レーザーにはCO2やYAG(ヤグ)レーザーが使われています。ロボットを使った材料の切断、微細加工、溶接はこれからも一層採用されると思っています。
 注意すべき点は、レーザー光線は目に見えないので、やけどや網膜損傷などが生じるので、安全対策が必要です。

4.10 その他の溶接法
 その他、組立時に使用される溶接法には、ビーム溶接、プラズマ溶接、熱間圧接など特別な製品の組立に採用されています。


5.接着
 最近の接着剤の技術開発は目覚ましいものがあります。いろいろな製品の組立に接着剤の採用は次第に増えて来ています。

5.1 接着の利点
 接着の例です
 二つの部品を組み合わせしていくのが組立ですから、従来からの溶接などに代わって接着もその手法の一つといえます。接着工法は、使われる接着剤の開発が急速に進んでおり、これからの主力になってくるものと思われます。特に加熱を必要としない、瞬間的な接着は製品の組立精度を確保しやすいという大きな利点があります。同時に大掛かりな設備も必要がないので、設備投資費用が少なくて済むといえますから、組立コストも安くなるということになります。

5.2 接着工法の採用
 製品組立に使われる接着剤には多種多様な種類が販売されています。樹脂製品や紙製品では大きな外力がかからない場合は、接着組立が一般的になっています。自動車にも接着工法が用いられていますが、車体のような構造的な組立部位の採用はまだ限られています。今後、一液性の瞬間接着剤や自動化が容易な短時間(瞬間)接着剤の開発が期待されます。

5.3 部品の精度確保
 接着工法では、部品の精度保持が重要になります。接着作業時において、部品の合わせ部位に隙間が生じたり、接着組立時にクランプなどで強制したりするような部品合わせが必要な場合、接着作業はできなくなり、同時に組立精度も確保できないことになります。

5.4 接着時間
 接着による製品組立で一番の課題は製品固定時間(接着時間)の課題があります。如何に短時間で接着組立できるかが問題です。市販の瞬間接着剤のようにすぐに接着固定できるような構造用接着剤が今後開発されると思っています。自動車のような構造部分に使用する構造用接着剤は、まだ数十秒の接着時間を要しているので、生産性が課題になっています。

 接着車体の試作:
 現役時代(1970年)に接着車体を試作したことがありました。当時上司であったT課長の発案でスポット溶接を使わず、構造用接着材を用いて車体を組立(Body Assembly)したことがありました。当時の接着材は、塗装オーブンの熱で硬化させるという工法でした。しかし、これでは車体精度が確保できず採用には至りませんでした。ボンネット、ドアーなど一部の外板組立品の採用するにとどまりました。
 現在の構造用接着材の性能は格段に向上し、塗布してから2~3分で硬化するまでになっています。こらからもどんどん使われると思います。車体組立工法も大きく変化していくことでしょう。

6.その他の組立方法
6.1 ロー付け(蝋付け)
 ロー付けの例です
 ロー付けの例です
 ロー付けには、銀ロー付け、はんだ付け、真鍮ロー付けなどが使われています。ただ、従来の鉛を含むはんだは、有害物質に指定されていますので、鉛を含まないはんだ付けが採用されています。

(1) ロー付けの特徴
 ロー付けは、溶接とは異なり母材(部品)を溶かさないで組み付ける方法といえます。ロー付けは、小さな穴埋め、隙間の充填などが効果的な作業です。さらに、溶接では困難な部品の組立に採用されます。例えば、薄い板又は極細い部品、極端に小さな部品、円形や角形状、異種金属のロー付け組立などがあげられます。
 なお、ロー付け部位は、強度が強くないので、大きな外力が加わる部位のロー付けは亀裂や損傷の原因になります。このような部位は溶接を行うような設計をすべきです。

(2) ロー付け作業
 よく使われる真鍮ロー付けは、ガスバーナーなどの火炎を使って、およそ800度前後の温度でロー付け作業を行います。このため、作業に時間を要するので少量生産向きといえます。現役時代、プレス部品の組立で発生した隙間の穴埋めに真鍮ロー付けを行いました。真鍮棒にフラックスをつけて小さくい穴をロー付けで埋める作業でした。なお、小物部品のロー付けでは、加熱炉を用いた連続ロー付け炉も量産用として採用されています。

6.2 圧入
ノックピンの使い方です 
 圧入による組付け例です
 圧入による組立は、軸径に対して穴径のサイズを若干小さくして、軸部品を常温状態で圧入して組み立てる方法です。この圧入結果、穴部品は膨らみ、軸部品は縮むことになり、この力が結合力を保つことになります。このような組立は、位置決めに使うノックピンやブッシュのような部品を圧入することで使われています。当然ですが、軸径より穴径が小さすぎると圧入できなくなります。また、その圧入寸法が緩いとゆるみや脱落の原因になります。この方式は、取り外しや再圧入がやり易いという利点があります。
 なお、結合する二つの部品は、同種以外の異種材料でも可能になります。

6.3 はぜ折りとかしめ
はぜ折りの例です 
 はぜ折りの例です
(1)はぜ折り
 はぜ折り(ヘミング:Hemming)は、組立品の端面のフランジを折り曲げる加工です。自動車のドアー外周のフランジの折り曲げや部品の端面のフランジを折り曲げて組み立てる加工です。
 フランジ曲げは、結合力が強くないので、結合力が必要な場合は補強(ロー付け、接着剤塗布など)を行います。


 リベットカシメの例です
 カシメの例です  カシメの例です
カシメの例です 
(2)カシメ
 リベットに代表される組み付けにかしめ加工があります。 リベットには、いろいろな工夫がされた形状やカシメ工法が考えられています。代表的な リベットは鉄骨、橋梁など大物構造物に使われています。自動車の大型フレームにも使われています。
 小物部品のカシメには多種多様なものがあります。その中で、軽量品や紙、布などの組み合わせによく使われているのが、「ヒメリベット」です。概要を右図に示します。カシメ作業にはハンマーやカシメ工具が使われますが、厚物でしっかりカシメを要する場合にはエヤー工具も使われます。


6.4 焼ばめ
 焼きばめの説明図です
 焼きばめの例です
 「焼ばめ」とは、金属は加熱すると膨張し、冷却すると縮むという性質を利用した組立工法です。軸(シャフト)径より穴径を小さくしておき、穴側部品を加熱して穴径をシャフト径より大きくしてからはめ込むものです。この「焼きばめ」は、しっかりした結合となるので、強度を要する組立に利用されます。
 逆に、シャフトを液体窒素などで冷却して、シャフトの直径を穴径より小さくして挿入する方法が「冷やしばめ」と呼ばれる方法です。穴側を加熱するより、軸側を冷却した方が有利な場合に採用されます。なお、このシャフトの直径と穴の径の寸法関係を「締め代」といいます。この関係寸法はJISにも規定がありますので、参照してください。


6.5 キー留め
 キー留めの使用例です
 軸部品と回転部品を組立する方法の一つとして、キー(key)を使用するものです。キーは、加工の簡単な部品で、組立品の分解や再組立てが容易にできるという利点があります。キーの種類はいくつかあり、長方形型の「平行キー」や半円型の「半月キー」などがあります。なお、組立部品において、キーの結合が緩くなると摩耗が進行して不具合の原因になります。
 その昔、半月キー部品を自動車メーカーに納入していた時、メーカー側の組立部品にお客さまからのクレームが発生しました。その原因が納品した半月キーにもあるという判定で修理代の一部を負担させられました。負担金額に納得できませんでしたが、キー部品の問題ではないという証明ができず困ったことがありました。

6.6 スナップリング留め
 スナップリング留めの使用例です
 軸部品の組立において、軸が組立品の外に飛び出さない(抜けない)ようにストッパーの役割や軸の移動を限定するために用いられるのが、スナップリング(Snap Ring:止め輪)です。スナップリングには、さまざまな形状がありJISにも規定されています。このような止め輪を軸の本体や軸を通す穴部品の一定個所にセットする方法が行われています。これによって、軸の動きが限定されるようになります。
 なお、このリングは、ばね鋼で作られており、その弾性力で軸や穴の中に設けられた溝に専用の工具を使ってセットします。また、このリングを外すことにより、修理などのための分解ができ、再組立もできます。

6.7 クリップ留め
 組立に使われるクリップには、さまざまな種類があります。また、形状や大きさ、使用する部位など用途に応じて使用されています。

(1)クリップナット
 クリップナットの使用例です
 組立部品同士の穴に合わせてクリップナット(Clip Nut)を差し込むもので、ある程度の締め付け力を要する部位に用いられます。締め付けは、ナットに対応したボルトになります。クリップナットが差し込めるような部位であれば、容易にボルトナットが使用できるので、あまり精度を要しない部位の組立には使い勝手がよいといえます。

(2)樹脂クリップ
 樹脂クリップの使用説明図です
 いおいろな樹脂クリップ  いろいろな樹脂クリップ  いろいろな樹脂クリップ
 樹脂製のクリップは多種多様なクリップ形状品が使用用途に応じてが市販されています。主たる用途は、内装部品の取り付けに使用されています。安価で樹脂製のような軽量部品の組立には欠かせない部品であるといえます。
 樹脂クリップの使用方法の代表的な例を右図にしまします。組み付ける部品同士の穴に合わせてクリップを工具で頭部を軽くたたくなどして、形状を広げることにより部品がしっかり組み付けることができます。

6.8 その他、縫製など
 製品をつくるためには、上記以外にもさまざまな工法が使われています。部品同士の組立(結合)は、その製品組み立てに必要な最適工法を選択することが必要であることはいうまでもありません。そのポイントは、組み合わせる材料、品質の確保、より安いコスト、組み立てに要する時間にあるといえます。


 



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