ものづくり工場の問題と解決事例 
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 在庫管理 
 
在庫管理のポイントを説明します 

 ものづくりに必要な部品や材料は、組立工程や加工工程に切れ目なく供給する必要があります。欠品が生じないようにしていかなくてはなりませんのが、そのために過剰な在庫が生じやすいことが問題になります。在庫が少ないと欠品のリスが高まり、在庫が多いと安心だからです。従って、在庫を出来るだけ少なくして、生産ラインの欠品を無くしていくことが在庫管理ということになります。
 

 目次

1.在庫管理
1.1 部品や材料の管理
1.2 在庫は何故起きるのか
2.在庫要因の改善
2.1 同期化対策が在庫管理の基本
2.2 ネック工程の改善
3.在庫管理に影響を及ぼすキーワード
3.1 リードタイム
3.2 購入部品の発注
3.3 欠品と在庫管理費
3.4 安全在庫
3.5 帳票と現品の不一致
4.在庫管理の基本的考え方
4.1 在庫量の変化を掴む
4.2 在庫削減はJITが基本
4.3 在庫品はどこにあるか
4.4 仕掛かり在庫の問題
5.荷姿
5.1 荷姿設計
5.2 SNPの決定
5.3 容器計画
5.4 運搬車両
6.現品管理
6.1 現品はどこにいくつあるか
6.2 発注業務
6.3 現品の出庫指示
6.4 棚卸と不良品等の処理
7.倉庫
7.1 倉庫建家
7.2 床の耐荷重
7.3 倉庫設備
7.4 倉庫内のレイアウト
8. 在庫管理のポイント
8.1 倉入れのロット番号の明示
8.2 混在の排除
8.4 倉庫作業マニュアルの策定と徹底
8.5 帳票や伝票の設計
9.在庫管理の仕事とは



1.在庫管理
1.1 部品や材料の管理
 
 在庫品の出庫は重要な管理ポイントです
 ものづくり工場では、材料や部品、仕掛かり品、完成品(製品)などの在に関する問題は、少なくないと思います。在庫は物の停滞を意味しますから、できるだけこれを避けることすなわち、在庫のムダを少なくする取り組みの必要性が指摘されています。これが「在庫管理」と呼ばれているものです。
 さらに、在庫管理は、「資材管理」の一分野とされており、「購買管理」や「倉庫管理」「外注管理」「運搬管理」などと密接な関係があります。ここでは、在庫管理を中心に考えていきたいと思います。
 在庫品は資産でありお金と同じですが、在庫管理業務にはなかなか陽が当たりません。現金なら目の色変えて取組むのと同じように、在庫管理の重要性を再認識していきたいものです。

在庫問題改善のポイント:
 工程の在庫が増えないようにするには、作りたい時に、必要な量がつくれることです。ところが、前工程不良が原因で作業できない、設備の故障や停止が頻発して、作りたい時に作れない。欠品で部品手待ち多く作業にかかれないなどの原因でやむを得ず、作れるときにつくるという作りだめが生じるからです。一番損害の大きいのは、ラインの停止や次工程の停止だからです。自分の工程によってライン停止を起こすのは、自分の責任のようにとられ、成績評価にも影響があると思われている面もあります。 

1.2 在庫は何故起きるのか
 倉庫内は整理整頓が第一歩です
(1)工程のトラブル
 ものづくりの工場では、材料や部品が停滞することなく、川の流れのように流れていく同期化については、生産管理の項で述べました。すなわち、すべての工程が同じ生産タクト(Tact Time)で進行するように管理していくことです。一部の工程が遅れるとラインストップになり、あちこちで生産作業の停滞が発生し、在庫(工程間在庫,又は仕掛かり在庫など)が発生します。この工程トラブルによる停滞は、作業の遅れ、不良品の発生、設備の故障、輸送のトラブル、外注メーカーの納入遅れ(すなわち欠品)などさまざまな原因から発生します。いいかえれば、同期化の崩れが在庫の生じる原因といえます。

(2)設備のトラブル
 かって、現役の生産技術者として現場を飛び回っていた時代に、あるサブ組立部品の自動組立化設備のトラブルで困ったことがありました。組立部品が遅れラインストップになることがたびたび生じていました。そのたびに怒られた現場の作業者は、機械の調子が良いときに、生産計画数量以上の多くの部品を組み立てていました。現場の作業エリアのあらゆるところに床置きまでして在庫を準備していました。工長は、そこまで作るなとストップをかけましたが、設備の信頼が置けないので、作業者としてはやむを得ないことでした。設備仕様の改善や保全体制の確保などに苦労した思い出が残っています。

2.在庫要因の改善
2.1 同期化対策が在庫管理の基本

 在庫品は企業にとっては財産扱いで、お金が物に変わっているだけですから、何の利益も生まない在庫品は、可能な限り少なくすることは当然です。この在庫品を最小限にしていく取り組みの一つが同期化対策です。同期化対策とは、先ず生産や納入部品などの遅れや作り過ぎなどの改善を図っていくことです。あらゆる在庫品と呼ばれるものはそこで停滞している状況ですから、その停滞している要因を取り除くことが第一です。

2.2 ネック工程の改善
 在庫すなわち部品や仕掛かり品の停滞は、さまざまな遅れから生じるものです。したがって、生産の遅れを生じさせるネック工程の改善が求められます。さらに、設備故障などで生産時間延長(残業など)でも在庫は生じることになりますから、この対策も在庫管理の改善になります。これらの業務は広義の生産管理であり、狭義では、購買管理、倉庫管理、設備管理などの問題でもあります。企業全体で、在庫に関連する業務を円滑に行うことが重要になってきます。

3.在庫管理に影響を及ぼすキーワード
3.1 リードタイム(Lead Time)
 在庫管理にもリードタイムが課題になります
 在庫管理に関する問題の一つにリードタイムがあります。リードタイムは、すでに日本語になっていますが、所要期間(日数、時間など)のことです。すべての仕事にはリードタイムがあります。タヌキ君が、コンベヤーラインの葉っぱを瞬時にカップラーメンに変えるようなことはできないからです。リードタイムの一例をあげると、「発注から納品までの日数」、「加工に着手してから製品が完成するまでの時間」、「新製品開発から販売開始までの月数」などのことです。何事にもスピードが要求される現代では、リードタイムは、短いほど望ましいことになります。

  リードタイム
 現代の経営課題は、「スピード」です。別の視点では、リードタイムの短縮です。この対策として、在庫や半製品を持つ、SEのように同時並行で業務を進める、標準化や作業標準化(業務標準化)などがその例です。また、繰り返して行なう事務業務は、事務の自動化(特にデータのやりとりに関するソフト開発)に取組むことです。生産ラインでは、仕掛かり在庫は、リードタイムを伸ばしていることになるので、これを極限まで減らしていくことに取組んでいくことです。いろいろな問題が浮上してくると思います。これを改善することが現場の監督者、技術者の仕事です。

3.2 購入部品の発注
 在庫品にも管理費用が発生します。
 発注は、生産ラインで使用する材料や部品などを外部(発注先、購買先)から購入する仕事です。在庫量は、発注回数や発注量で大きく変化します。毎日の生産数量分を納入するならば、在庫はほとんど発生しないですみます。すなわち、毎日の生産計画に同期して納入すれば在庫はゼロになります。JIT(ジャストインタイム)は、まさにこれを実行するシステムです。しかし、輸送コストや受け入れ検査など事務的コスト(発注コスト)が膨らみます。したがって、在庫コストを総合的に計算して、「経済的発注量」という考え方が出てきます。これは、生産工場では在庫削減から見て不向きといえます。発注方式には、いろいろな方法が考案されており、専門書にくわしく述べられていますので、ここでは省きます。経済的発注量の計算式を参考に示します。

発注方式
 購入品の発注方式には、企業(業種)によりいろいろな方法があります。ここでは、代表的な発注方式を記載します。発注は「発注時期」と「発注量」ですから、次の方法があります。@定期不定量発注、A不定期不定量発注、B不定期定量発注です。ものづくり工場では、通常は@ですが、特別に管理する部品はAを、ボルトナット、ネジ類はBの方式が多いようです。 

3.3 欠品と在庫管理費
  生産ラインで欠品が発生するとラインストップになります。ラインストップ時間が数時間、数日となると、その損害は莫大な金額になります。したがって、欠品は避けなくてはなりませんが、そのため在庫品をたくさん持ってこれを防ぐ手法は、成り行き管理を示すものです。在庫管理を科学的に行なうことにより在庫量を低減できるといえます。また、在庫品の管理費用の把握は重要な課題です。在庫品の金額の金利、倉庫費用(土地、建物、電気代などを含む)、在庫品の損耗、在庫品の運搬費用など計算してみることが必要です。在庫品の分析には、ABC分析が参考になると思います。

3.4 安全在庫
 
材料や部品の切れ(欠品)を防ぐため、「安全在庫」という考え方があります。予期しない部品切れを事前に予測できないことがあるため、一定の確率を予測して在庫量を決めるものです。日常の生産活動の中で、
@外注部品納入の遅れ(ロット不良、納期遅れ、輸送中の事故など)
A生産計画変更による急な増産
B生産工程の不良発生による部品追加補給
C社内工程の生産遅れ(ロット生産日程の変更など
D倉庫内での損耗(劣化、変形、錆などによる廃棄部品の発生)
 このような日常の生産活動の中で発生するデータを記録して、確率による予測に基づいた安全在庫(安全率)を設定する必要があります。また、安全在庫扱いの部品は、ABC分析から選定するようにします。
 なお、安全在庫に似た用語で、標準在庫、基準在庫、適性在庫、最少在庫などという言葉がありますが、その企業できちんと定義して使用するようにします。

3.5 帳票と現品の不一致

 現品が倉庫にあるのに組立ラインでは欠品となってしまうことが起こります。現品管理に不備があるとこのようなことがたびたび起こります。帳票上は在庫があるのに現物がないということも同じです。在庫が多くなり、あちこちに分散すると現品管理の部品の把握に苦労します。帳票と現品の一致は当然のことですが、実務では現品過不足が発生します。したがって、必要な時期に棚卸しを行なう必要があります。この棚卸の結果から、部品在庫の帳票との差異を分析して、何が問題なのかを検討し、その改善を図って行く取り組みが大切です。

4.在庫管理の基本的考え方
4.1 在庫量の変化を掴む
 在庫品を減らす手段の一つです
 発注部品が納入されると最大の在庫となり、ラインの生産数に応じて出庫され、在庫は次第に減少していきます。在庫がなくなると、発注部品が納入されるという繰り返しが在庫管理の基本的な取り組みです。その流れを図に示します。日常の管理では、発注部品の遅れや生産の数の変化、在庫部品の損耗などいろいろな問題が生じますから、担当者は現在の在庫量を正確に把握することが求められます。

4.2 在庫削減はJITが基本
 在庫量を少なくする手段です
 在庫量を減らしていくと、当然ですが在庫分が無くなるので納入回数を増やしていくことになります。同時に納入数量も減らさないと在庫量は減少しません。その関係図を右に示します。さらに、だんだん在庫量を減らした行くと納入回数が増え、納入数量も少なくなっていきます。最終的に在庫ゼロにするには、毎日納入して、その数量はその日の生産数と同じになります。これが、まさに「ジャストインタイム」ということになります。「必要な品物を必要な時に、必要な量だけ手に入れる」を実現することになってきます。

4.3 在庫品はどこにあるか
 在庫管理で難しい問題の一つに、「在庫品はどこにある」かです。在庫品は倉庫にきちんと管理されておれば問題が生じても解決は早いといえますが、すべて倉庫にあるとは限りません。組立ラインサイドや現場の空き地に臨時的に仮置きされていることもあります。さらに、工程途中の仕掛かり品も在庫です。置き場がないからと別のエリアに置き忘れた在庫品の問題もあります。在庫品の置き場をきちんと決めておくことは管理や問題発見に役立ちます。

4.4 仕掛かり在庫の問題
 加工や組立工程間で発生する仕掛かり品の在庫は、現場任せになるとその在庫数はだんだん多くなるという傾向があります。「作りすぎの在庫」と呼ばれる在庫ですが、この在庫はそれなりの理由があります。欠品によるラインストップを避けたいのが第一です。第二は、在庫がたくさん目の前にあるとそれだけ安心して作業ができることです。前工程の不良で自分の作業遅れが生じてもカバーできるとか、設備や機械が故障しても在庫分だけ時間稼ぎができることなどがあります。
 このように、在庫が多くなると生産上のいろいろな問題や課題が隠れてしまうことになります。トヨタの大野耐一先生は、この作りすぎを制限するため、「かんばん」を使うことを考案しましました。よく聞かれる「かんばん方式」と呼ばれているものです。かんばんを使用することにより工程間の仕掛かりを制限することにしたものです。


5.荷姿(Packing)
5.1 荷姿設計

 材料や部品を運搬するには、運搬する荷姿を設計しなければなりません。何もしなければ「ばら積み」とよばれる容器に乱雑に詰め込むことになります。荷姿の要点は、
@材料や部品の輸送中の破損や変形などから守ること
A少ない容積の中に合理的な運搬効率を考えること
B作業者の部品取り出しなどの扱いやすさを考慮すること
 このようなポイントを考えて設計することになります。

5.2 SNPの決定
 
SNP(Standard Number of Package)は一つの容器(パレットやバケットなど)に含まれる部品数量のことです。ただ多ければよいというものではなく、運搬効率、ラインサイドの制約、次工程に供給する仕掛かり在庫の制限数量などのほか、使用する容器や荷姿の状態を考慮して、部品毎にSNPを決定します。決定したSNPは、厳守しなければなりません。ロットごとに変更するようなことはできません。現品管理では、パレットやバケットの数をもって数量の把握を行ないます。

5.3 容器計画

 荷姿と並行して設計する必要があるのは容器です。一般的には小物部品は、段ボールや樹脂製のバケット(Bucket)が使われ、部品大きさと荷姿に合わせてサイズを決めるようにします。重量のある部品やサイズの大きい部品は、専用の容器を設計します。一般的には、標準パレット、柱パレットが使われています。

標準パレット(木製)   樹脂パレット 樹脂容器(バケット) 
    標準パレットの例

標準パレットの例  (種類は多い
いろいろなバケットが市販されています
樹脂容器(バケット)   パレットガード   柱パレット
  樹脂製のバケットの例      
パレットガードの例
       
柱パレット形状の例

 なお、容器は回収して再使用しますから、回収の利便性も考慮します。さらに、ラインサイドで作業者が開梱する場合は、その作業の容易性も工夫しなければなりません。ラインサイドへの部品供給方法は、関係部門で協議することが必要です。

5.4 運搬車両
 運搬車の例  運搬車両の例
 工場では、いろいろな運搬車が用いられています。最近は、自動運搬車が採用されるようになってきました。自動車の自動運転と同じように、これから一層自動運搬車の活用が広がるものと思います。在庫品の運搬には、通常は工場と同じフォークリフトが使用されます。倉庫専用のフォークリフトは、ものづくり工場では避けたいものです。フォークリフトには、いろいろなタイプがありますので、十分検討して採用しなければなりません。

 自動運搬:
 このところ、「自動運転」の開発はめざましいものがあります。自動車の自動運転だけではなく、運搬車の自動運転も同様です。その背景には、GPSの精度向上があります。今は数メートルの誤差ですが日本のGPS衛星が稼働すると、数センチといわれています。その他イメージセンサーのような各種のセンサー類の開発と共に自動運転はこれから工場の運搬にもますます使われてきます。無人運転車が自由自在に働くスマート工場がそこにやってきています。

6.現品管理
 
材料、部品、仕掛かり品(以下在庫品という)などがどこにいくらあるかを常に把握し、生産現場からの要求に対して、迅速に供給する役割を持っています。在庫管理の中心的な業務ともいえます。現品管理は、すべての在庫品を同じ扱いをすると大変なので、ABC分析を行ない管理の優先度を決めます。

6.1 現品はどこに、いくつあるか
 
工場内で使用する在庫品のすべてについて、品名、部品又はコード番号、保管場所、数量、保管の容器名称、SNPなどを常に把握して、現品がどこにあるか、いくらあるかを明確にしなければなりません。パソコンやタブレットを利用して、受け入れ(入庫)、払い出し(出庫)ごとにリアルタイムで記録していくようにします。

6.2 発注業務
 
発注部品のリードタイムや在庫状況に従い、発注業務を行ないます。納期遅れのないように発注先との連携、突発的な事故時の対応などを行なう必要があります。生産ラインに欠品を生じさせないよう仕事を進めます。よくあるのは、納期が来ても納入されないことが分かって、初めて異常事態になっていることを知ったなどは問題外です。納品ロット不良が発生した場合、どう対応するか、事前に業務処理基準を決めておくことも必要です。

6.3 現品の出庫指示
 
現場の生産計画に基づき、現品の出庫指示を行ないます。現場への払い出しは、現場と具体的な置き場所、数量、荷姿、容器など取り決めておきます。そのルールにしたがい出庫処理を行ないます。なお、緊急時の欠品対策として、生産ラインと出庫担当者の「ホットライン」や現場のラインサイドに「払い出し要求ランプ」の設置なども検討します。

6.4 棚卸しと不良品等の処理
 
帳票と現品が合わないことはよくあることですが、これは何らかの作業ミスの結果です。さらに、在庫中の在庫品の破損、劣化、流用(誤使用)、誤廃棄、所在不明、伝票誤記載などが発生します。したがって、定期的に又は必要があれば「棚卸し」を行なう必要があります。 さらに、在庫品の不良品処理(納入品の返品処理など)も規定にもとづいて行なうようにします。現品の廃棄や手直しなど関係部門と協議して社内手続きに従い処理を進めます。

7.倉庫
 
在庫を持たない現在の生産管理では、倉庫も持たないということになりますが、いろいろな理由で倉庫を利用することも実際には起こり得ます。以下倉庫活用の時の注意点を示します。

7.1 倉庫建家
 倉庫は材料や部品を保管する場所ですが、保管による劣化や保管環境からのダメージを受けないように配慮した建家仕様とします。温湿度の影響を受ける場合は空調設備、天井窓からの紫外線が問題となる場合は天窓は作らないとか、外部からのゴミ、ホコリ類や有害物質の侵入の恐れがある場合は出入り口をエヤーカーテン、二重扉など検討しなければなりません。風水害対策も必要です。また、危険物を保管する場合は、その容量により法規制がありますから、それに従うことが必要になります。
 倉庫の位置は、工場と密接配置が一般的ですが、外注部品の数量多く、納品や搬送設備などの関係で、工場と距離をとることもあります。この場合には、工場との搬送経路、搬送容器など検討すべき点が生じてきますから、倉庫配置には、注意しなければなりません。

7.2 床の耐荷重
 一般的な1.5トンフォークリフトを使用するのであれば、床の耐荷重は1トン/m2でカバーできますが、重量のある部品を倉庫内で高く積み上げるような倉庫では、床の耐荷重を計算する必要があります。さらに、大型トラックなどが倉庫内を走行するレイアウトであれば、その場合も床の耐荷重も計算します。さらに、床の水平度も重要な事項です。簡単なテストとして、床面に置いたビー玉やゴルフボールが転がるようではNGです。

7.3 倉庫設備
 部品棚(ラックのいろいろ) 

部品ラックにはいろいろな種類があります

小規模の自動倉庫 
 
多品種の在庫品の管理は自動化します
 倉庫内の保管物によって設備を設置します。重量のある鋼材のような場合は、天井クレーンが必要になります。一般的な材料や部品を保管する場合、よく使われる設備は、部品ラックです。ラックの種類は多く、保管する物に応じて設計するか、市販されている標準的な部品ラックを準備します。中小物部品は、種類が多い場合、小規模タイプの自動倉庫が使われることがあります。

7.4 倉庫内のレイアウト
 倉庫で保管する材料や部品は、先入れ先出しでなければなりません。これを実施できるようなレイアウトが優先します。もう一つは、柱のスパン(Span:間隔)の制約があります。柱は邪魔になりますが、少なくすると建設コストが高くなります。経験上では7m前後です。(例:6m×12m、7.5m×15mなど)さらに、天井高さ(梁下高さのこと)をいくらにするかです。通常はフォークリフトを使用するので、その操作が出来る範囲が限界になります。高く積み上げると危険ですから、必要な安全処置(落下防止など)を講じなければなりません。


8.在庫管理のポイント
 倉庫管理で問題が起きるのは、「後入れ先出し」が安易に行われていることです。倉庫の奥にある先入れ部品を取り出す手間が面倒ですから、手元にある後入れ部品を先に出す方が容易だからです。倉庫管理は「先入れ先出し」が完全に行えるようにすることが重要ですが、実際にはなかなか困難です。その背景には、整理整頓が不行き届きで、乱雑な部品置き場では混乱が生じてしまいます。先入れ先出しのルールをしっかり守れるようになっていないことなどが問題です。このような問題の改善を行なうには、その企業の倉庫管理の実態を把握して対策しなければなりませんが、ここでは一般的な問題と対策の視点を示しておきます。

8.1 倉入れのロット番号の明示
 プレス部品のようなロット生産品や外注納入部品には、必ずロット番号を付与します。そのロット番号が容器で確認出来ることが必要です。例えば、識別方法として、色別した番号や記号が外部から容易に見える工夫をします。

8.2 在庫品の置き場(Location )の確保
 同じ部品は同じ場所に置くことを守ることです。そのため、部品毎にロケーション番号を床面に記載などして。レイアウト図に表示します。ロケーションには、番号順や工程順など工夫する必要があります。

8.3 混在の排除
 生産数の変動や納期数量の変更などで、一時的或いは臨時的に規定の場所以外に仮置きする場合が起こります。この結果、ほかの部品との混在が発生します。これは、絶対に避けなければなりません。したがって、このような問題が生産計画の都合などから頻繁に発生するような場合、この事態に備えて別途予備的なエリアを、レイアウトの中で確保することを考えておきます。

8.4 倉庫作業マニュアルの策定と徹底
 現場の作業と同様に倉庫作業も重要な作業ですから、倉庫における在庫品の扱い、容器の処理、運搬作業、機器の操作方法、ラインサイドへの供給作業方法など標準作業方法を定めると共に、これを遵守していくように監督や指導を行います。

8.5 帳票や伝票の設計
 在庫管理は、パソコンやタブレットで行ないますが、そのデータのインプット作業は必ず伝票に基づき行なうことです。伝言や報告書類などからでは間違いが生じ易いといえます。伝票設計には、必ず担当者(データの記載者)と確認者(班長などの責任者)の二重チェックを採用します。面倒なことですが、問題が生じたときの手間を考えると事前にミスをなるべく防止する処置を講じていくようにします。
 このような取り組みは、部品点数が多い場合には、ABC分析などから部品別に優先順位を付けて実施する方法もあります。

9.在庫管理の仕事とは
 在庫管理の業務の一例です
 今まで述べてきた内容をまとめて表示しますと、右図のようになります。在庫問題は、企業にとっても大きな課題ですから、その改善のために全社的な取り組みが必要になっています。





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