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ものづくりの現場のリーダーである第一線監督者は、工長、職長、班長、係長などと呼ばれており、企業によっていろいろな呼び名があります。第一線監督者は、現場の「ものづくりの力」を高める重要な役割をになっており、特に、職場の責任者として、生産を行いながら、部下を指導すると共に職場の改善と生産目標達成に努めることが期待されています。
1.第一線監督者とは 2.監督者の役割 2.1 監督者の仕事とは 2.2 仕事の進め方のポイント 3.職場の改善に取り組む 3.1 改善の心構え 3.2 改善の5つの「かえる」 3.3 先ずは品質改善から 4.原価低減の取り組み 4.1 職場のムダの改善 4.2 製品のコストの内容 5.現場改善の可視化 6.現場の問題と解決 6.1 3Sや5Sを実践していく 6.2 職場の可視化を進める 6.3 不良品を防ぐ取り組み 6.4 標準や基準を守る 6.5 現場管理の道具を活用していく 6.6 現場作業の記録をしっかり行う 7.部下を育てる 7.1 部下の育成は監督者の大きな仕事 7.2 部下の力量を評価する 7.3 仕事の要求レベルをの把握 7.4 教育訓練の実施 7.5 仕事の教え方 8.QCサークル活動の推進 9.それはどうなったか結果を知ること 10.異常処理のマニュアル 11.外国人労働者の受入れ 11.1 日本の人手不足の問題 11.2 外国人労働者の受入れ 11.3 外国人労働者 11.4 日本で外国人が働くには 11.5 在留期限 11.6 技能労働者の受入れ体制 11.7 賃金 11.8 仕事の割り当て 11.9 日本の生活支援 11.10 不法滞在問題 11.11 日本の永住権、日本国籍取得への道 12.「育成就労制度」の成立 12.1 育成就労制度の概要 12.2 外国人労働者受入れ職種 12.3 日本語のレベルアップ 12.4 賃金に魅力がない日本 1.第一線監督者とは
例えば、体系的な学習のために、監督者向けの外部教育(通信教育など)を受講してみる価値があります。社内での実務教育は、経営者、社内技術者のほか、外部コンサルタントの活用も考えてみてはどうでしょうか。 2.監督者の役割 2.1 監督者の仕事とは 現場の監督者には、二つの役割りがあります。製品をつくること(固有技術)と現場を管理すること(管理技術)です。そしてこの役割を果たすために部下を育てていくことも重要な仕事になります。このような役割を実践していくことは大変難しいことです。いろいろなトラブルの多い職場ではなかなか手がまわりません。ですから、監督者は自分に代わって仕事の一部を代行させることも考えていかなくてはなりません。作業の指導を代行する副工長、設備や機械の管理を代行させる副班長などのように指名して、職場の基幹となるべく次の後継者育成も大切な役割です。 次に監督者の基本的な役割を参考に例示します。 @作業準備(前班の申し送り事項確認、朝の作業開始準備と作業指示等) A職場の巡回(職場の安全や作業状況の確認、設備稼働状態などの確認等) B事務処理(部下の勤怠、連絡報告事項、その他上司からの指示事項の処理等) C技能訓練(新入りや未熟練者への作業指導、作業指導書の作成や改定など) D次月生産準備(生産計画に基づく人員計画、治具工具や資材の準備等) E品質確認(重要工程の品質状況、問題工程の品質確認、不良品のチェック等) F報告、連絡、相談(部下、関連部署、上司等に対する調整や打ち合わせ、会議出席等) このように、現場の重要な役割を担う監督者の責任は重いものがあります。 2.2 仕事の進め方のポイント 監督者に限らず、技術者でも管理者でも自分の仕事は、PDCAの手順をしっかり行うことにあると思います。PDCAにおいて大切なことは、 a.仕事の計画や目標を「数値化」すること b.計画の進捗や実績を「見える化」すること c.結果を把握し記録して計画数値との「差異を分析」すること. d.問題点の「改善」や再発防止を行うこと e.仕事の成果を標準化、「文書化」すること このようなポイントは、常識的なことですが、着実に取り組んでいくことが必要です。 中小企業の職場を視察した時感じたのは、実施した結果の記録、成果の反省や今後の改善策などの記載が欠けていることが見られることでした。
3.職場の改善に取り組む 3.1 改善の心構え 作業改善、設備改善、レイアウト変更などの職場の改善は、現状を変え新しいやり方をすることですから、不安や心配から変更に反対する者が出てくることを承知していなくてはなりません。新しいやり方は、時間がかかったり、不具合が発生したり、別の問題が発生したりすることも起こります。これも慣れてくれば、すなわち、習熟が進んでくると計画した通りになってくるので、辛抱強く推進することが肝心です。職場改善のリーダーとして、自信を持ち、全くぶれないことが成功につながります。 3.2 改善の5つの「かえる」 改善の着眼点は次の5つの「かえる」であると思っています。改善とは、「今までのやり方、方法を新しくかえること」といっても過言ではありません。
3.3 先ずは品質改善から 自動車メーカーの工場技術者であった現役時代で、一番苦労したのは品質確保でした。ばらつきが大きく、不良の発生が問題でありました。次に自動化設備の故障が続き、生産量が達成できないことでした。 監督者は、先ず不良品をつくらないことに徹しなければなりません。不良の原因を分析してその対策を推進することです。着目点は、作業方法や設備(機械、治具、工具)の改善、組み付け部品精度向上(部品不良)が先ず取り上げるべき原因になります。 さらに、技術部門、設計部門との連携をとり不良発生の原因除去と再発防止に努める必要があります。品質管理部門との情報交換や購買(調達)部門に外注部品の品質向上に働きかけることも重要なことです。このように、監督者の役割は非常に大きく、重要な役割をもっています。
4.原価低減の取り組み 4.1 職場のムダの改善 監督者の重要な取り組みの一つは、コスト低減を図ることです。現場でのいろいろな生産活動は、そのまま実際のコスト(製造原価)として把握され、製品の利益の大小に反映されることになります。ご存じのように、日常の生産活動において、現場にはいろいろなムダが起こっています。それはその職場だけの原因や責任ではなく、その工場全体や全社的な問題でもあります。監督者は、現場で起きるいろいろな問題を把握してその改善を図ると共に、関係部署へのフィードバックや協力して問題の解決を進しなければなりません。 4.2 製品のコストの内容 次の図は、製品にかかるコストの内、ムダなコスト(もったいないコスト)がたくさん発生していることを示したものです。現場での製品をつくる活動は、すべてコストとして把握されますから、このムダなコストをなくしていくこと、すなわち、職場のいろいろな問題を改善していくことが求められています。
5.現場管理の可視化 最近のITの活用は目を見張るものがあります。さらに、IoTの採用も急激に増え生産活動も大きく変化しつつあります。監督者や管理者は、これからタブレットを片手に現場の管理を行なうことになってきます。現場管理も一層可視化が必要になってきます。ただ、重要なことはオンライン(LIVE:ライブ)で行なわなければ、意味がないということです。 次に、職場の可視化の例をあげてみます。これはあくまで参考です。
6.現場の問題と解決 多くの職場を視察してみると、それぞれ課題や問題をかかえ、その対策や改善のために熱心に取り組んでいます。大切なことは、基本をしっかり実践していくということです。 6.1 3Sや5Sを実践していく
職場では一般的な取り組みとして5Sがいわれていますが、その職場の必要に応じて実践していくとよいと思います。
6.2 職場の可視化を進める 職場のいろいろな情報を管理者や監督者のノートに記載するだけでなく、それを可視化して職場に公開するようにしていくことです。職場の一角にわかりやすくして掲示して、皆んなと職場の情報を共有して現状理解や問題の改善への協力を得ることです。例えば、工場の他の部署や自分の属する職場の不良品の推移グラフや改善事例などは、関心を高めるはずです。ただ、不良低減や改善などの成果を上げたグループなどは、朝礼などで報告、表彰などフォローもしなければ絵に描いたものになります。よく現場で見かけるのは、張り出した日付のままで、その後の記載がない、フォローした事例の掲示が見えないなど一時的に終わっているようなケースをたびたび見かけます。せっかくの可視化の努力が活かされていません。残念なことです。 次に参考として情報の内容や公開の事例を示します。 職場情報の見える化
6.3 不良品を防ぐ取組み
6.4 標準や基準を守る 職場には、いろいろな標準や基準類が示されているはずですが、場合によってはさらにその細部の作業標準書を監督者がつくり、作業者に熟知させることが必要です。例えば、未熟練者には標準作業書で指導を始めますが、だんだん熟練するに従い「オレ流」の作業になってきます。作業者は、楽をしたい、無駄なことはしたくないという気持ちがありますから、標準作業から少しずつ外れていくことになります。したがって、定期的に作業を見直し監査して、場合によっては標準作業を改定することも必要になります。このような取組みが標準や基準とのズレをすばやく感知し変化に対応できることになります。
6.5 現場管理の道具の活用していく 監督者は現場のいろいろなデータを毎日記録するとともに、その管理をしなくてはなりません。同時にそれを活用することが期待されています。その道具としてよく知られているのは「QC7つ道具」です。その他企業で定められた道具(帳票も含めて)もあるかと思います。これらの道具は毎日データをインプットして使うことが大切です。毎日その場で使うことによって有効になってきます。ですからリアルタイムで使うようにしなければなりません。作業が終わってからまとめてインプットするというような行為は、意味がないといわざるを得ません。異常値があらわれたら、直ちに処置することが大切です。 6.6 現場作業記録しっかり行なう 中小企業の現場を訪問して感じるのは、作業データなど必要な記録がない、正確でない、記載が欠けていることです。例えば、工程検査記録は定められた時間に記載していない。検査はしているが記録がないなどがありました。忙しい現場作業のなかで、作業や検査の帳票記載作業は避けたいところですが、工程での品質保証を確認するためにも決められたことは、きちんと実行するという習慣は守りたいものです。「データーの記録や検査作業なんかしなくともすべての製品は合格品」は、大変望ましことですがその実現に向けて努力したいものです。 ただ、記録するだけではなく、そのデータを数値的に整理をして、問題点や改善点を検出することに結び付けなくてはなりません。そして、作業のマニュアルの改訂や仕事の標準化に反映していくことが必要です。 7.部下を育てる 7.1 部下の育成は監督者の大きな仕事
7.2 部下の力量を評価する QMS(ISO 9001)に要求される人的資源について、部下の力量を評価して、業務の遂行に必要な能力を付与し、教育訓練を実施し、それを評価し、記録するという規定があります。部下の評価手法は、公平性と正確性が求められるので、各企業には評価基準や評価手法が決められています。大切なことは、定期的な見直しを行っていくことです。 7.3 仕事の要求レベルの把握 その仕事(作業、操作、運転、監視など)の要求する内容とそのレベルを、さらに要求される資格などを把握することが必要です。例えば、次のような項目があげられます。 ・作業技能のレベル(上級、中級、初級、新任) ・作業の遂行に必要とする資格(国家資格、社内資格、民間の認定資格) ・社内施策上取得すべき技能(多能工としての技能など)のレベル ・管理能力(リーダー、班長、係長、工長に要求される能力) ・その他企業として求める能力 7.4 教育訓練の実施 部下の業務に要求される能力を取得させるための手段としては、次のような手法があります。通常はOJTで行なわれています。 @OJT(On the Job Training、現場教育、実習など) A社内教育(社内の技術者、管理者、スタッフが講師) B外部講習の受講(専門教育、各種資格取得) C外部コンサルタント招聘による専門教育 D自己啓発支援(本人の自主性を活かす) その他企業により、いろいろ工夫して実施されています。QCサークル、改善サークルなどグループ活動も部下の能力向上には非常に有効です。 7.5 仕事の教え方 「部下が作業を間違えたり、不良を作ったりするのは、上司たる自分の教え方が悪いのだ」と考えて、仕事の教え方を見直すことだというのがTWI(Training Within Industry)です。現役の技術者時代に問題山積の現場で、工長がTWIの「仕事の教え方」に基づき、一生懸命に部下の指導に当たっていたことを思い出します。 TWIは、アメリカで考え出され実践されてきた手法で、日本の企業もこれを採用して成果を上げてきたと聞いています。仕事の教え方の手順を次の4段階で実施すると記載されています。概要は次のようなものです。
8.QCサークル活動の推進 現役時代(1960年〜1970年代)には、QCサークル活動が盛んで作業改善などの技術的な支援を行っていました。QCサークル活動で使われた問題解決手順は、改善活動の一つの手法で参考になります。 @作業不良などのような問題点を明確にする A問題点の現状を詳細に把握し、分析する B問題点の真の原因、大きく影響を及ぼす要因を追究していく C対策案(改善案)を決める D実施する E結果を確認すると共に歯止め(標準化)を行う このような活動の各ステップでQC7つ道具が活用されることはいうまでもありません。 なお、職場のQC活動と名付けなくとも、職場の「小集団活動(グループ活動など)」として取り組むことができます。また、「提案活動」として取り組む企業もあります。 このような小集団活動によって、職場の改善に取り組み、その成果に応じて一定の報酬や賃金配分率など反映するなども同時に取り組む必要があります。 9.それはどうなったか結果を知ること すべてのことにいえることですが、「計画」は誰にでもできますがそれを「実行」することは難しいことです。さらに難しいのはその「結果」を知ることであると常々思っています。現場を見て感じることは「その結果はどうなったか」ということが把握できていない(記録されていない)場合があることです。そして、さらに必要なことは、結果を見て「次の手」を打つことです。計画通りにならないことがほとんどですから、必ず次の一手を打たなければならないのです。この次の一手を常に打っていける監督者になることを期待しています。 10.異常処理のマニュアル 大地震や原発事故からいろいろな対策マニュアルが話題になっています。また、大津波からの「避難マニュアル」は海岸沿いの市町村では今や必須となっています。数十メートルの津波が想定されていますから、比較的にマニュアルも作成しやすいと言えます。職場でも設備故障、材料不良、作業者の怪我など想定できる職場の「異常処理マニュアル」は作成しておく必要があります。さらに、地震や火災、爆発など重大事故に対する予測は困難ですが、企業として可能な限り異常事態を想定して企業としての「危機管理マニュアル」を作成して、その実施訓練も行っておく必要があります。これは企業の危機管理として全社的に取り組むことが求められます。 特に注目したいのは、保全や運搬などの仕事を行う作業の安全管理です。機械や設備の修理、交換、撤去、など普段は行うことが少ない作業についても、「安全作業マニュアル」のほか、異常発生時の処置について事前にマニュアルに配慮しなければなりません。 11.外国人労働者の受け入れ 日本のものづくりだけではなく、いろいろな職場で外国人労働者の受け入れが少しずつ進んでいます。 これからの「日本の外国人労働者の受け入れの課題」について考えてみたいと思います。 現在の日本国は、外国人労働者の受入れはいろいろな制約を設けています。現在の状態のままでは作業者の不足は目に見えていますが、なかなか改善されていません。分かりやすくいえば、外国人労働者にとっては日本は鎖国状態であると思います。もう一つの課題は、日本の賃金が安いことです。日本人の賃金が低い上に、さらに外国人の賃金も低ければ日本で働く魅力もありません。
11.1 日本の人手不足の問題 日本の人口は、2019年には約50万人の減少が予想されています。出生数が約86万人、高齢者等の死亡数が約138万人になったと推測されていますからその差が約50万人というわけです。この傾向は今後も続くと思われますので、日本の人口は急激に減少する一途をたどることになります。このような環境にあって、日本は次第に人手不足になってきています。 11.2 外国人労働者の受け入れ このような人手不足時代を迎えて、日本が取り組んでいる外国人労働者(特に技能労働者)の受け入れについて考えてみたいと思います。私は、ものづくりの技術者として、20数年にわたり海外の技術者や現場のリーダー(監督者)たちと一緒に仕事をしてきました。さらに、各国で数ヶ月間の現地滞在生活などの経験から、日本で働く外国人労働者の立場に立って考えてみたいと思います。日本の人手不足を補うためにも、外国人労働者が健康で意欲的に働いて貰うために何を行わなければならないかを検討していきます。 11.3 外国人労働者 日本で働く外国人労働者は、現在(2019年)約150万人で、その中で技能実習生は約30万人が含まれています。その他、留学生資格でのアルバイトも約35万人に上っているといいます。今後も人手不足の日本では大幅な外国人労働者の増加が予想されています。特に、今後特定技能者の受け入れが拡大されるのでの現場で作業する外国人技能者の受け入れは、企業の課題となっています。 11.4 日本で外国人が働くには 外国人が日本で働くには、法律(出入国管理法など)で定められている一定の資格が必要です。これを在留資格といいいます。これは技術者や特定の技能者又はいろいろな専門の資格所有者であることが法律で定められていますので、それに該当することが必要です。現在では、現場で働く技能者には、技能実習生と特定技能者が該当します。なお、日本の大学で学ぶ留学生は、留学の在留資格を持っておれば、一定の労働時間数の範囲でアルバイト程度の仕事が可能です。 11.5 在留期限 在留資格や仕事の内容などによって、在留期間が定められています。例えば、5年、3年、1年、3ヶ月というような期間が決められています。なお、特定技能1号や2号資格では、5年が上限で1年ごとの更新が必要など細かい規定が設けられています。また、在留資格があれば、本人の配偶者や子供は日本に滞在することができることになっています。滞在期限は、本人の在留期限と同じになります。詳しいことは、法務省のホームページを参照してください。 11.6 技能労働者の受け入れ体制 企業が外国人労働者を受け入れるに当たって事前に準備しなければならないことがあります。以下その主な課題について述べておきます。 (1)技能労働者の受け入れの目的 外国人技能労働者(以下技能労働者)を受け入れる理由(目的)を明らかにし、将来の技能労働者をどのように社内で位置づけるか、教育訓練や監督者(職場のリーダー)の登用条件など社内の方針を決めるとよいと思います。社内の人達と差別なく技能労働者と共に働くことにが必要になるからです。 (2)受け入れの準備 外国人労働者を自社の工場などで働いて貰うには、その受け入れ環境を整えなければなりません。文化、宗教、慣習などの異なる外国人の受け入れるには、いろいろな配慮をする必要があります。先ず「住」です。社員寮やアパートを準備する必要があります。ただ、一室に大勢の人達を詰め込むようなことは、禁止しなければなりません。これからは、個人のプライバシーに十分配慮していきます。「食」でも宗教上の制約、個人的な制限など様々な問題があるので、社内の食堂のメニューには配慮することも必要になります。また、日本人は海外で日本の「醤油」は大変使い勝手があります。このように技能労働者の出身国からの食材の調達なども必要な場合があります。その他、多くの取り組む課題がありますので、次に述べていきます。 (3)企業における日本語教育 仕事を十分にこなしていくには、お互いのコミュニケーションは重要な事はいうまでもありません。外国人は、自国の日本語学校や日本留学などから日本語を学習しますが、日本語の一定のレベルが求められます。採用後も社内において仕事に必要なレベルに達するまで日本語の教育を行うことが重要になります。 (4)就業規則 外国人労働者を採用した場合、大切なことは就業規則の説明です。日本人と外国人が共に仕事をするのですから、勤務時間や休憩時間、休日、残業などに関する就業規則や安全規則は周知させなければなりません。企業のルールをきちんと事前に説明しておきます。特に安全教育や仕事を終えた退社後の生活についても注意すべきこと、日本の慣習なども教えておかねばなりません。 11.7 賃金 賃金は技能労働者にとっては大変重要な問題ですから、丁寧に説明して理解を得ることが必要です。 (1)賃金に関する内容説明 外国人は日本人以上に賃金に敏感です。日本で働くのは高賃金を得るためですから、その夢を実現させてやりたいものです。したがって、賃金に関する社内の賃金規定は、最初に具体的に説明しなければなりません。給料(賃金)の構成、金額の内容、控除内容(保険料や税金など)、手取額の計算などを具体例で説明します。特に、残業手当、休日出勤手当など説明は理解を得るようにします。このような説明は文書で示しながら行う必要があります。外国人は、自分の給料(支給明細書など)を他人に見せることに何ら抵抗はなく、むしろ自分が少ないとすぐもっと上げてくれと上司に言ってきます。場合によっては抗議もされますから、特に日本人と差別的なことのないように配慮しなければなりません。
(2)本人の賃金についての説明 本人の賃金が決まったら、その説明をすることが必要です。現在の賃金の理由やこれからどうすれば昇給していくかなど将来の姿も教えておきたいものです。すでに述べたように外国人は、他人の賃金を知りたがり、その比較を行います。他人より手取りの賃金が少ないと不平、不満の原因になります。一層の昇級やより賃金の高い仕事を求める事になりますから注意が必要です。日本で働く技能実習生が低賃金に不満を持ち、現在数千人が無断欠勤などして、行方不明になっているともいわれています。賃金に関しては、将来の高賃金への取り組みなど、最初の段階から本人が納得できる説明を心がける必要があります。 (3)最低賃金に関する問題 日本の最低賃金について、しばしば支払い問題が起きています。最低賃金は地域によって若干違いますが、都市地域では時間1000円前後になっています。なお、最低賃金は、一定期間内の技能習得の場合や軽易な業務には適用されない場合があります。支払い賃金が最低賃金以下の場合、50万円以下の罰金などが課せられることがあります。 なお、外国人労働者に賃金を払わないとか、最低賃金以下の低賃金で働かせる日本の悪質な企業が存在しているというニュ−スを聞くのは大変残念なことです。
11.8 仕事の割り当て 技能労働者の仕事の割り当ては、本人の希望や本人の持つ資格や技能が優先されることは言うまでもありません。しかし、企業の事情から必ずしも本人の意向が採用できるとは限らないものです。ただ言えることは、一般的に本人の意識は「賃金優先」と「仕事優先(技能習得)」にありますが、本人の希望が優先することはいうまでもありません。何故その仕事を始めるのか事前に十分説明と理解を得ることが大切です。日本的な仕事の当初は、仕事の準備や機器の清掃など外国人から見ると雑用と思われる仕事からスタートするので疑問を持たれる場合があります。 (1)資格、技能などの事前調査と評価 技能労働者の学歴(知識水準)、職歴、日本語能力、所有する資格、特技、などの評価は重要です。仕事の割り当てに当たって必ずチェックしなければなりません。本人の申告だけではなく、必要に応じて証明書類で確認します。さらに、面談を通じて本人の性格、日本語や英語などの語学力など確認するほか、担当する仕事に必要な項目は事前に調査又は確認しておきます。これらの資料は、今後の育成(教育訓練)に活かしていきます。 (2)仕事の内容説明 仕事の割り当ては、難しい取り組みの一つです。やって欲しい仕事と本人がしたい仕事がなかなか一致しないことが少なくありません。仕事が慣れてくると問題が顕在してきます。賃金との関連をつけてその差を埋めることも手段の一つです。資格を必要とする仕事は、当然資格取得の援助を行います。無資格で作業は決して行ってはなりません。また、本人の仕事の内容や範囲は明確にしておかねばなりません。あれもこれもと際限なく仕事をさせるようなことはしてはならないのです。 (3)作業の指導に関する注意事項 本人の仕事が決まったら、仕事の説明と作業の指導が必要です。日本人作業者の見よう見まねで作業させるようなことは避けなければなりません。責任者(監督者、作業リーダーなど)が社内の規則に沿って行うべきです。作業指導の基本は「標準作業書」に基づくことです。なるべく作業内容を絵図にして説明するようにします。仕事の教え方のマニュアルに従います。仕事が熟練するまでは、専任の担当者を決め、困ったときの相談相手になってあげるような仕組みも必要です。 (4)仕事の指導 日本語の難しさから、なかなか作業の内容が十分理解できていないことが少なくありません。その対策として、重要な部分は、翻訳するとか、絵図、写真、ビデオなどを併用するとよいと思います。仕事の教え方はTWIが参考になります。技能労働者も熱心に仕事に取り組んで、より高い賃金を得るため、熟練作業者になることを目標にすると思います。その支援も欠かせません。 (5)熟練作業者 「熟練作業者」(熟練者)とはどんな作業者を示すのか理解しておきます。社内で定めるとよいと思います。一般的にいわれる熟練作業者とは、第一に製品の品質(仕事の質)をきちんと達成することができることです。第二に定められた作業時間(標準時間)内に作業ができること、第三に1日の標準の作業量(製品の数量、仕事の量など)を達成できることです。この場合、欠品手待ち時間、機械故障時間、前行程の作業不良手待ち時間などの手待ち時間は考慮します。さらに、「高度な熟練作業者」(熟練技能者とします)になると、作業時に発生したいろいろな問題を自ら改善できること、他の作業者に対して作業指導ができること、自分の行う作業の技術的な知識を持っていることなどがあげられます。 (6) 監督者への道 技能労働者も高度な熟練作業者すなわち、熟練技能者となると「現場のリーダー」の役割を果たせるようになります。さらに、職場の仕事の管理ができるようになると現場の「監督者」になれる資格を得られたことになります。このように、技能労働者の将来の育成目標を持って支援を行っていくことが望まれます。 11.9 日本の生活支援 技能労働者などの外国人が日本で長い生活を送ることになるので、異国で生活する不便さなどに対する支援は不可欠です。雇用した企業だけではなく、日本国民としても関心を持って見守りたいものです。さらに、家族を帯同している場合には、生活環境や子供の教育などの一層のいろいろな支援が不可欠になります。
(1)住環境のルールに関する支援 居住する住環境によって、いろいろな市町村の規則があります。たとえば、町内会等での約束事は、丁寧に説明する必要があります。特に、ゴミの分別や出し方は日本人でも難しさがあります。町内会の役員、行事などにも相応の役割分担が生じます。住環境に対するルールの不慣れさは、周辺住民からのクレームの多い問題の一つです。
(2)日常生活に関する支援 日本語や日本の法律の不明さなどに対するいろいろな支援が必要です。行政手続き、医療に関する支援、銀行口座の開設や送金、スーパーでの買い物支援、家族アパート借用問題などさまざまな日常の生活に関する支援を行う必要が生じます。自動車の運転を必要とする場合には日本の交通ルールといった日常の法律、慣習などの周知させることも必要になります。企業や町内会などのレクレーションなどにも積極的に招待したいものです。
(3)こどもの教育支援 家族として滞在している子供の教育に関する課題も大変重要なことです。特に日本語の不自由な子供の教育は困難な課題があります。子供の具体的な状況を踏まえながらできる範囲の支援方法を考えていきます。日本語の習得支援のほか、各学科の補習授業など本人のレベルに対応した支援を考えていきたいものです。さらに、地域の子供たちと一緒に遊べるような配慮なども必要です。
(4)災害に関する支援 水害や地震の多い日本の災害発生に関する支援は遅れているかも知れません。その住んでいる地域の防災、避難方法、避難場所など周知させておく必要があります。本人の母国語の文書で説明するなどの配慮も必要になります。 (5)危機管理 本人や家族が事故、傷害事件などに巻き込まれた場合の対処方法、母国の問題から緊急的な帰国などによる異常時の対応などの危機管理の支援も必要になります。企業で担当する窓口や担当者を事前に決めておくなどの対応を取っておきます。外国人労働者に対する企業の危機管理を事前に取り決めておくことが必要になります。 11.10 不法滞在問題 日本に住む外国人には、日本滞在の期限が法律で決められています。これはどこの国でも同じです。私もビザの期限が切れる前に必要な書類を持って現地の役所に出頭して、滞在期限の延長更新を行いました。しかし、この更新を怠ると「不法滞在」となり、これが見つかると強制帰国処分となります。低賃金や長時間労働の仕事から逃れるなどして、多くの不法滞在者が日本に滞在しているといわれています。このような外国人は、その生活費を稼ぐため、低賃金で働いています。これを雇用する日本企業も少なくありません。長時間労働や労働災害で死亡する外国人労働者も報告されています。自社ではこのようなことが起きないよう日頃から技能労働者とのコミュニケーションを取っておき、不満な事項には丁寧に対応していくように心がけたいものです。 11.11 日本永住権、日本国籍取得への道 現在では、厳しい条件がありますが、外国人労働者の将来にはこのような道もあるということを知っておいて欲しいものです。将来、この門戸は少しずつ広くなるのではないかと思っています。そうしなければ、急速に進む人口減少の日本は生き残れないと私は思っています。 12.「育成就労制度」の成立(2024,6,14) 外国人労働者の受入れに関する制度として、「技能実習制度」が施行されていますが、この改正が国会で審議決定されました。ただ、具体的な詳細は今後発表されますが現時点での概要を記載します。 12.1 育成就労制度の概要 現在の「技能実習制度」は廃止され、新たに「育成就労制度」が2027年までに施行されます。現在の技能実習制度と就労育成制度の違いを次に示します。 ![]() 技能実習制度は日本で技能を学び、帰国後出身国の産業の発展に寄与することが期待された取り組みです。従って、5年間の実習が終了すると帰国することになっています。ただし、この実習期間に「技能試験」と「日本語試験」に合格すると「特定技能1号」の資格を取得することができます。これにより「在留資格」を得ることができ、5年間引き続いて日本で働くことができます。なお、特定技能2号の資格を得ると在留期間の制限はなくなります。 育成就労制度は、長く日本で働いてもらう制度といえますから、3年間の育成就労期間で特定技能1号の資格取得を得ることが目標です。このため、外国人労働者を受け入れた企業は、技能試験と日本語試験を受験させなければならないことになっています。従って、受け入れ企業は、育成就労期間内に特定技能1号の資格を得られる支援が求められます。(もし、不合格になった場合、1年間の延長が可能) さらに、特定技能2号の資格を得ると在留期限の制限がなくなり、引き続き日本で就労することができます。 12.2 外国人労働者受入れ職種 技能実習制度の12分野に加え、育成就労制度で新たに4分野の業種(自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)が追加予定ということです。日本は、まだまだ外国人労働者の受入れに慎重で、なかな門戸が広がりません。人手不足は当分続くと思います。今からでも、自動化省人化を急ぎ進めるほかはありません。 12.3 日本語のレベルアップ 海外で働いた経験から特に感じているのは、言葉の問題です。日本語の会話は仕事を通じて何とか上達していきますが、「読み、書き」は外国人労働者には困難がつきまといます。受入れ企業では、就労時間外でもこの読み書きの習得を支援する取り組みが求められます。週2日1回1時間のような計画的な実施を望みたいものです。特に仕事に関する言葉、専門用語など優先的に取り上げて欲しいと思います。 12.4 賃金に魅力がない日本 日本の賃金は低く日本で働いてみたいと思う外国人労働者はだんだん少なくなってきているようです。欧米や韓国の方が賃金がよく、日本で働く魅力がないという評判が高くなっているといわれています。現在、日本で働いている一部の技能実習生の賃金が法律で定めている最低賃金より低いというのはどういうわけでしょうか?。このような最低賃金さえ支払えない受け入れ企業は、外国人労働者ではなく作業ロボットを雇ってくださいと私は言いたいと思います。日本の評価を貶めることだけはやめて欲しいものです。
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