ものづくり工場の問題と解決事例 
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 活動事例の紹介

 
ここで弊事務所の活動事例を3件ご紹介します。ご参考になれば幸いです。

事例1:中堅企業のコスト削減活動
 
購買部門と設計部門の担当者を対象に製品のコスト削減 をどのように進めていくかVEを基本として取り組んだ活動です。
事例2:オランダでの技術支援
  ドイツの部品メーカーがオランダの設備メーカーに発注した自動車部品組立設備の検収に当たり品質確認支援を行ったものです。
 
事例3:中国自動車組立技術支援
 
中国自動車会社における新車種の自動車組立技術支援で、現地の技術者や作業者と共に立ち上げた活動です。



事例1.中堅企業のコスト削減活動

 みんなで原価について学習
 K自動車部品製造販売会社は、他社との競争から販売部品の価格引き下げ要請が強まってきたこと、さらに利益の確保を図るため、製造原価低減活動を進めることにしました。このため、外部コンサルタントの指導を受けながら、設計部門と購買部門の担当者全員を対象としてVA手法を用いたコスト低減活動を実践することになったものです。
 設計部門には現在自分が担当している製品(又は構成部品)のコスト削減を、購買部門には自分が購入している購入部品の引き下げを具体的な目標数値を決めてその達成のための活動を行うというものでした。



1.活動内容の要点
■VA手法の学習  全員対象に座学として、VAテキスト(市販本)を使いVAの基礎知識を習得。
■担当者の抱える課題や問題点とその改善のための論議   コスト削減のために、各自の日常業務から生ずる課題や問題点を明確にする。講師を交えて全員で論議した。
■コスト削減目標の設定  各自がコスト削減目標を設定。担当する設計部品や購入品を取り上げ、具体的なコスト低減のアイデアや活動工程表の立案と検討。
■コスト削減活動の実践  それぞれが具体的な活動を実施する。その過程での問題点や達成への手法などについて、全員で論議しながら、個別及び全員対象に講師のアドバイスを受ける。
■成果の確認  コスト削減達成状況を把握する。未達の場合その要因分析、対策を検討して次のステップに継続していく。

2.コスト削減への課題
 的を狙う
  この企業の場合、各自が個別にコスト削減を進めているので、企業全体として推進する必要が望まれます。そのため、次のようなアドバイスを行いました。
(1)コスト見積もり取得帳票類の見直しと標準化
  必要な項目の追加、削除して、社内の帳票の標準化を行う。
(2)コストテーブルの作成と共有化
  過去の実績や理論的な見積もりコストを検討して、材料や部品のコストを体系的にまとめること。すなわち、コストテーブルを作成していくとともに、社内で共有してこれを活用していくことが重要であること。講師の作成したコストテーブルの事例を参考に説明を行いました。
(3)固有技術の学習
  設計だけでなく、購買担当者も固有技術の基礎的な知識を習得するように努めること。講師から機械加工、プレス加工、冷間鍛造工法などコスト見積もりのために必要なそれぞれの固有技術の基本的な知識、コストの事例などを説明しました。
 
 帳票設計:
 仕事に使われる帳票の設計(書式)は非常に重要です。必要とする情報の記載欄、関連部署への配布先の選定、秘密保持の観点など配慮して仕事に必要とする情報の活かせる帳票に設計にします。帳票によって、どんな情報を必要とするかが一目でわかるようにすることです。
固有技術とコスト:
 部品や組立品のコストを下げるにはできるだけ加工工程を減らすこと、製作スピードが速いこと一体成形すること(部品数を減らすこと)がポイントになります。
 さらに、部品の形状、材料や公差によって、とるべき加工法が異なるので、製品設計がコストを決めることになってきます。
 

3.購買品のコストテーブル
 購買品のコストテーブルの作成の一つの手法として次の図を説明しました。購買担当者として、必要な個別のコストテーブルを持つことが望まれます。この図は、購入する部品のコストを分解して作成するものです。
例えば、プレス部品のコストについて
・プレス機械別の標準時間
・材料価格、歩留まり、材料不良率
・プレス加工費
・輸送コストなど
これらのアイテムごとに自社の実績データを踏まえて作成していきます。.
       
       購買品のコストテーブルの構成




購買品と調達品:
 買入側の仕様(寸法などの品質、設計図など)に基づき購入する物品を「調達品」、標準品(市販品など)を「購買品」として区別する企業もあります。特に調達品の場合、設計や技術部署との連携が重要になります。調達品の仕様変更(材料、公差など)で買入コストが大きく変わってきます。 

4.全社的なコスト低減活動
 
コスト削減は全社的な活動として取り組むことによってより大きな成果を上げることができます。次の図は購買担当者がコストダウンを展開するために必要な活動の関連図を示して説明した図ですが、参考として掲載します。

        購買品のコストダウンの活動体系図



5.K社に対する最終報告書の概要

 
K社のコストダウン活動の最終報告書の概要を参考に書いておきます。

最終報告書
(1)組織的、体系的なVA,VE活動が実践されています。同時にグループ活動による成果が見られます。この活動を継続して進めていくことがこれからの課題です。

(2)VA思想が身に付き始めています。さらに、突っ込んだVA,VE提案を創出することが求められます。現状にとらわれずに、ワークデザイン的な取り組みが望まれます。

(3)30%のコストダウンを図ることが目標ならば、採用可能なアイデアとしては50%程度のコスト削減項目が欲しいものです。保留項目が多いので、今後の詰めを期待しています。
(4)現在コストと代案のコスト案の精査を行うことです。具体的な原価見積もり(原価計算)、原価分析が必要になります。特に材料費、加工費(加工時間など)をしっかり算出することです。外注部品についても同様です。

(5)外注部品のコストダウンが課題です。この場合、見積もりの価格の精査だけではなく、外注の工程まで踏み込み、コストダウンの技術支援を行うことです。必要に応じて、技術部門の支援を要請していくことです。

(6)VA、VE案の商品性、耐久性など品質確認を行うことも必要です。試作品を作ったり、実車テスト(自動車に取り付けてテストを行うこと)も必要に応じて実施することです。

(7)材料費の比率が高い部品は、設計段階で材料重量を算出していくことです。部品毎に原単位を掴み重量低減の目標を検討していきます。

(8)ユーザークレーム、要望などをVAテーマに反映させていくことも大切なことです。

6.固有技術の基礎知識を学ぶ
 
設計者や購買担当者は、コストに関する基本的な知識として、固有技術についての知識が求められます。固有技術には次のようなものづくりの技術がありますが、主な名称と要点のみ記します。

 (1)機械加工
 フライス盤加工作業者
 旋盤、NC機械など用いて、材料を切削、研磨など行う加工。加工によって材料を無駄に捨てる部分が出たり、加工に時間がかかるので、コスト面からはなるべく機械加工部分を減らす工夫が必要です。

 (2)プレス加工
 プレス機械を用いて鉄板を切断、曲げ、絞り、穴あけなど行うものです。加工スピードが速いので、安価でかつ量産部品に適しています。また、鍛造加工をプレス工程の一部に組み入れて、より精密、複雑形状の加工技術開発が進んでいます。
プレス加工は使用する金型の製作費が高いので、量産品でないとコストが高くつきます。金型を如何に安く作るかがポイントです。
 プレス加工には、プレスブレーキ機械を用いた長尺物の曲げ加工や金型の中に多数の加工工程を組み込んだ順送プレス加工があり、小物部品の生産によく使われています。

 金型:
 プレス金型に代表される金型は、製作費が高いのが難点です。特に、プレス加工は部品の工程数が3〜6工程要するので、金型費を如何に下げるかがコストダウンのポイントになっています。一方、金型はノウハウの塊といってよく金型企業は社外秘としています。中小物部品では、順送プレス加工により、精度の高い製品ができますが、これも金型が命となっています。

 (3)冷間鍛造
 鍛造機械で鍛造による成型加工を行うものですが、代表的な加工品は、ボルトやナットです。冷間鍛造は、材料を常温状態で加工するもので、加工スピードが早いので量産品の生産に用いられ、小物から大物部品までいろいろな部品が製造されています。鍛造加工で出来るだけ製品に近い形状に成形して、機械仕上げ部分を少なくする工夫をすることによりコストを下げることができます。

 
(4)鋳造
 砂型をつくり溶融金属を流し込んで(注湯という)製品の形状にする昔からある「鋳物品」ですが、製品にするまでに時間がかかるのが難点です。製品の形状にも制約があり、機械加工も必要になるのでコストがかかります。ただ、大物品から小物品までいろいろな製品が作れるという特徴があります。なお、小物品で形状の複雑な部品は、ロストワックス(Lost-Wax)鋳造が有利なことがあります。

 (5)ダイキャスト
 ダイキャスト機械で、アルミ、マグネシュームや亜鉛合金など溶融した金属を金型に一定の圧力で注湯もので多くの工法があります。部品精度も高く、製造時間も短いので、量産向きでコスト的に有利といえます。
 ダイキャスト工法は、専用の機械や金型が必要ですから、プレス加工のように、初期の費用がかかるという課題があります。

 (6)樹脂成型
 射出成型機械
 射出成型機でプラスチック原料を加熱溶融して、金型に加圧注入するものです。複雑形状や精密な部品が短時間に安価にできることから、日用品をはじめその用途は際限がないといえます。樹脂成型方式にもいろいろな成型加工方式があります。大中物部品は、自動車にも採用が増えているので、大物品は精度向上が課題です。

 (7)溶接
 溶接は二つの材料や部品を溶融して一体化(溶着)するものです。代表的な溶接として、ガス溶接、アーク溶接、スポット溶接がありよく使われています。溶接の方法として数十を超えるさまざまな溶接加工法があります。自動車工場ではロボットがスポット溶接やアーク溶接を行っています。溶接作業はロボットによる自動化が一般化しています。
 溶接は、材料や組立品に熱を加えることになるので、製品の精度を確保するための技術も必要になります。

 (8)焼結
 ステンレスやアルミなどの材料を粉末状にして、プレス機で部品形状につき固めた後、高熱炉で焼き固める工法により製品を作るものです。小物品で歯車や軸受品などの特殊な用途の部品製造に用いられます。
 焼結加工は、工程の一部で熱を加えることになるので、最終工程で加工品の寸法を確保するサイジング(寸法調整)工程が必要になります。

 (9)表面処理
 防錆や装飾などのために、金属や樹脂部品の表面に銅やクロムなどめっき(鍍金)するものです。塗装は樹脂塗料を焼き付けるものです。どの部位にどの程度めっきや塗装するかがコストに大きく関係します。なお、めっき工場からの廃液による公害が開発途上国では問題となっています。

 (10)熱処理
 鋼材の硬さや耐摩耗性などを強化するために焼き入れ、焼鈍などの熱処理が行われることがあります。熱処理工程で焼き入れ不良のような不具合問題を起こすことも少なくないので品質管理は特に注意を払うことが必要です。
 焼き入れ硬度不足では、摩耗が早くなったり、硬度が高すぎると亀裂や折損などが発生したりするクレームも少なくありません。

 (11)接着
 
接着剤を用いて、同種や異種の部品を固着するもので、構造用接着剤の開発とともにその用途は広がってきました。自動車部品や日常生活品でも接着取り付け品が多くなっています。 

 (12)組立
 設計寸法(XYZのような三次元寸法)通り部品を位置決めして、ボルトナットなどのねじ類や溶接などで、さまざまな部品を順序良く組み付けて、製品をつくるものです。一般に組立治具を用いて正確に部品の位置決めをすることがポイントです。特に部品精度が組立品の品質を左右するので、部品製造工程や組立工程の品質管理が大切です。
(以下事例2へ続きます)



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